2009年12月25日
川喜田半泥子の陶芸は半泥子一代のもの
プロを魅了する半泥子とは
どんな人物なのか。
23日(水)岐阜県立現代陶芸美術館で開催されている
「川喜田半泥子のすべて」の最終日を見た
半泥子は
加藤唐九郎をはじめ名だたる陶芸家が畏敬した伝説的陶芸家で
今も半泥子を語ると熱くなる陶芸家をたくさん知っている
プロを魅了する半泥子とはどんな人物なのか

「川喜田半泥子のすべて」の入場券
近代陶芸史に大きな足跡を残した川喜田半泥子(1878-1963)は
百五銀行の頭取など数々の企業の要職をこなした実業家
最後の大茶人として名を成した
実業家の「耳庵」松永安左ェ門(1975-1971)とは
三つ違いというから
ほぼ同時代の実業家ということになる
半泥子が
鈍翁益田孝(1848-1938)
原三渓(1868-1939)
松永耳庵などと決定的に違うのは
数寄者に飽き足りず
自ら本格的な作陶を始めたことで
それも50代半ばというから尋常ではない
現代で言えば
細川護熙元総理が陶芸の道に進んで話題になったが
細川さんの場合は晴耕雨読といった文人生活の延長上で
半泥子と同列に扱えば細川さんが恐縮するのは自明
(生き方の問題で上下の区別はないが)

山の地形を生かした現代陶芸美術館の外観
豊田から岐阜県立現代陶芸美術館へは、東海環状で30分ほど
土岐多治見インターを出て多治見方面に

駐車場から美術館へのアプローチ(お洒落!)

岐阜県立現代陶芸美術館は
美術館部門と世界の陶磁器文化の集積と交流を目的にした
オリベスクエアの二つからなる複合施設
半泥子の陶芸は半泥子一代のもので
それ以外の言葉はみつからない。
半泥子の焼き物は
強い意志が働いているのに意志が見えない
造形が働いているのに造形が見えない
私なりに焼き物を見てきたつもりだが
そんな経験則は半泥子には何の役にもたたない
空気をやさしくつつむ存在感は他に比類がなく
驕った言い方になるが
半泥子の陶芸は半泥子一代のもので
それ以外の言葉はみつからない

粉引茶碗 銘「雪の曙」 石水博物館蔵(図録より転載)
むろんこれは私の直観で
何の根拠もないが
同じ館内で開催されていた加藤孝造展を見て
直観は確信に変わった
加藤孝造は
織部賞を受賞した美濃の陶芸界を代表する陶芸家で
美濃の伝統を受け継ぐ最後の陶工として高く評価されている
どの作品もピュアで宝石のように輝いているが
半泥子を見たあとではみんな商品に見えてしまう
常設展の名だたる陶芸家の作品を見ても同様で
半泥子が今も多くの人に畏怖される理由が
なんとなくわかるような気がした

志野茶碗 銘「赤不動」 東京国立近代美術館蔵(図録より転載)
なお、「川喜田半泥子のすべて」は
タイトルにあるように
陶芸のほか、建築、本画、書、写真、俳句など
多岐にわたる半泥子の仕事の全容が紹介されたが
長くなるため割愛した
ご容赦を