2008年10月10日

作品ライブラリー(6)ヨリシロ








 

素材:白塗した松/器:信楽大壺/寸法:≒200㌢×200㌢×300㌢/
場所:豊田市民文化会館(豊田)1983年




私の花の始まり

いけばな史にエポックをしるした「いけばなEXPO81とよた」での私の作品について、異端のいけばな作家西村菁洋は、後に雑誌「花道」に「理念の華かとうさとる」と題して、《私には理解不能の造形だった。所属する流派も一度聞いたが忘れてしまう程度のモノである。どうやら理論が先行し、実体の伴わない作家さんだろう、というのが、このときの偽らない認識だった。》と手厳しく書いた。西村菁洋に指摘されるまでもなく、一番落ち込んだのは私自身で、83年から始めた個展シリーズ「手さぐりの中から」は、この反省をバネにしたもの。
 
「ヨリシロ」と題した作品は、この個展で発表したもので、最初は壺の中に白塗りの聖なる松を立てた。いけばなは植物と器が一体になるものと決めていたからだ。何度試みても納得できないため、壺を逆さに設置し、間合いを計って松を立てた。「やった」と思った。いけばなは関係で成立することにこのとき初めて気がついた。「私の花」の始まりである。

  


Posted by かとうさとる at 02:18 | Comments(0) | 作品ライブラリー