2010年10月06日

入善町の発電所美術館でセシル・アンドリュ展


1995年は戦後50年の
ターニングポイント


過ぎたことを回顧するのは老いた証だが、私は職にあった当時、「文化による地域づくり」を標榜して職員を主導してきた(つもり)。その指針としたのが「文化の定点観測」で、現在がどこからきて、この道はどこに向かっているのか、確認作業が不可欠と思ったからである。そんな習性が身についたせいか、いまもコトを「史」として概観することが多い。





1月17日未明。淡路島を震源とするM7.2直下型の阪神淡路大震災が発生


戦後50年の1995年はいろんな意味でターニングポイントになった年で、阪神・淡路大震災、松本サリン事件。大和銀行ニューヨーク支店が米国債投資の失敗で11億ドルの損失をだした事件は、米国の金融破たんを予見するものだった。

アートも臨界点に達していた。臨界点を象徴するのが1990年に開館した水戸芸術館に続いて竣工した豊田市美術館だった。バルブの象徴と指摘する人もいるかも知れないが、出口のない迷路に入ったいま、未来の扉をあけるためにも、私は20世紀の日本美術の到達点のひとつとして評価、検証する時期にきたと思っている。





水戸芸術館の作法の遊戯展は、「美術の現在」とサブタイトルにあるように、日本の現代美術の到達点を記録したもので、この年から1995年の5年間を私はアートの安土桃山と呼んでいる。(独断と偏見)



地方の時代をひらいた
下山芸術の森「発電所美術館」


1995年5月、地方分権推進法が成立。この年もう一つの美術館がオープンした。富山県入善町下山芸術の森「発電所美術館」で、私も開館直後とその後も幾度か足を運んだ。地場の文化資源を生かした地域づくりのモデルになったユニークな美術館で、地方の時代の端緒をひらいた。





国の「登録有形文化財」に指定されている発電所美術館の外観
(写真はホームページより転載)


発電所美術館は、取り壊される予定だった北陸電力の「旧黒部川第二発電所」(大正15年建設)を美術館にリニューアルしたもの。





発電所の構造を生かした展示空間(写真はホームページより転載)


左に発電用のタービンをまわす導水管の口が見えるが、私は初めてこの空間にたったとき、いまにも水が勢いよく流れてくるような恐怖感で足がすくんでしまった。


発電所美術館秋季企画展
セシル・アンドリュ展


産業遺産の魔力に魅かれて多くのアーティストがこの空間に挑んで話題になっているが、今回の秋季企画展は、金沢在住の造形作家セシル・アンドリュさん。セシルさんとは、豊田文化デザイン会議でコラボレーションして以来、折にふれてご案内をいただいているが、目に見えない言葉の世界をテーマに制作活動を続けている知的なアーティストで、発電所美術館とあわせてお薦め。







セシル・アンドリュ展は
10月9日(土)~12月19日(日)まで
富山県入善町の発電所美術館で開催






問い合せ
〒939-0631 富山県下新川郡入善町下山364-1
TEL&FAX0765-78-0621
  


Posted by かとうさとる at 22:48 | Comments(0) | アートの現在