2009年03月05日

お薦め選書1 いけばな・花の伝統と文化










お薦め選書1 いけばな・花の伝統と文化



「いけばな・花の伝統と文化」
(美術出版社)



本書は
昭和41年(1966)に美術出版社から出版されたもので
著者は日本民藝協会会長で美術史家の水尾比呂志

監修は美術史家の山根有三
内容は高度成長時代の中で見失われた日本文化の精神的源流を
花と日本人の関わりの中で問い直そうというもので
本の装丁・内容ともに格調が高く心が洗われる

特に序章は映像のナレーションを聞くように心地がよく
次代に伝えたい日本文化の選書としてもお薦め


いけばなの黄金時代を
支えた出版界


もし、私が100年後に復活して「いけばな」を語るとしたら
いけばなの黎明期から近代までを「史」としてざっと概観したあと
「いけばなは20世紀末に
日本発の場の芸術として世界に花ひらいた」と時間の大半を割く
そして「21世紀の初頭に絶滅した」と結ぶ姿が目に浮かぶ

勅使河原蒼風・宏がいて、小原豊雲がいて、中川幸夫がいて
半田唄子がいて、工藤昌伸がいて、北條明直がいて
重森弘淹がいて、吉村華泉・隆、工藤和彦、下田尚利、
千羽理芳、大坪光泉、日向洋一、坂田純、長井理一、
谷口雅邦、松田隆作など
俊英が鎬を削った「いけばなの黄金時代」を
見てきたように語るはずだ

もしかしたら口直しに假屋崎省吾を肴にするかも知れない
川瀬敏郎がいて、栗崎昇もいた
浜の真砂は尽きるとも
「いけばなの黄金時代」の種は尽きることがない

こうした「いけばなの黄金時代」を支えたのは出版界で
主婦の友、家庭画報、婦人画報が華やかさを競い
角川書店、講談社、小学館、美術出版社、求龍堂
八坂書房、京都書院などが学術を支えた


いけばなを絶滅した世代と
言われないために


「いけばなの黄金時代」はそんなに遠い昔のできごとではない
振り向けば見えるし、肉声も聞くことができる

私たちの役割は「いけばなを絶滅した世代」と
後世の史家に後ろ指をさされないように
「今」を走り抜けること。形式を伝承することではなく
民俗のたぎる志を次代に引き継ぐこと
この二つ以外にない
真の伝統とはそういうものだと思う


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Posted by かとうさとる at 01:39 | Comments(1) | いけばなお薦め選書
この記事へのコメント
>私たちの役割は「いけばなを絶滅した世代」と後世の史家に後ろ指をさされないように、「今」を走り抜けること。

まさに仰るとおり。
いけばなは決して廃ることはない、と思うのですが、そんな漠然とした希望的観測だけでは甘いですよね。
さとる兄の言葉、肝に銘じておきます。

>いけばなは20世紀末に日本発の場の芸術として・・

この辺のことに関して、カメラマンのO氏が興味ある言葉を述べていました。
後日にでも・・・。
Posted by risi@いけばな at 2009年03月06日 07:57
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