2010年07月15日

森村泰昌の希望と絶望に言葉を失う



豊田市美術館で開催中の
森村泰昌-なにものかへのレクエイム
に足を運んだ。


本展は20世紀の男たちをテーマに、世界のメディアに取り上げられた報道写真を源泉とする最新のシリーズ〈なにものかへのレクエイム-戦場の頂上の芸術〉を完全版で紹介するとともに、森村泰昌の代表作〈女優シリーズ〉の未発表作品を含む170点を加え、森村泰昌の全容を紹介。

森村泰昌の眼をとおして「20世紀とは何であったか」検証するとともに、未来を生きるための指針を探るもので、必見!。





本展は私が今年一番楽しみにしていたもので
弓を矯めるようにして雨の中豊田市美術館に急いだ。


私がこの日まで待った理由





本展は二部構成で、第一部東京写真美術館で好評を博した
〈戦場の頂上の芸術(オトコ達へ)〉に、第二部〈女優シリーズ〉
を加えてバージョンアップ。





私は東京写真美術館に足を運ぶつもりでいたが、学芸員から森村泰昌の代表作〈女優シリーズ〉の未発表作品を含む170点を加え、森村泰昌の全容を全館で紹介するという情報を得て、この日まで待った。


森村泰昌の説明は野暮
あとはよろしく!



私はアートマネージャーを職としていたせいか、モノとコトを「史」として概観する癖があって、重要なポジションにいる作家や作品をひそかにマークしてきた。中でも大竹伸朗や川俣正、宮島達男など20世紀の現代美術を決定した犯人を推理することは、ミステリー小説の犯人を捜すようなもので、結構楽しい。

当然のように森村泰昌も重要参考人の一人。と、ここまでは情況説明したが、本展を一巡して私のこうした認識がいかに驕ったものか、恥ずかしさと衝撃で声も出ない。そんなわけで、1970年11月25日、「楯の会」のメンバー4名とともに、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に籠城。割腹自殺した三島由紀夫事件をモチーフにした映像作品《烈火の季節/なにものかへのレクエイム》の檄文の全文を図録から転載して現場から退散。
あとはよろしく!。


烈火の季節/なにものかへのレクエイム
(MISHIMA)の檄文を図録から全文転載











静聴せよ。
静聴せよ。
静聴せよと言っているんだ。
静聴せよと言っているのがわからんのか。

私は、あなたがたに、このような状況下で話すのはむなしい。
しかしながら私はこの日本の文化というものを、
この日本の文化を頼もしく思っているんだ。
しかし日本の政治は政権争いの謀略、私利私欲に走り、
芸術もまたマスコミに踊らされ、流行現象の片棒をかつぎ、
世界戦略とやらにうつつをぬかし、コマ―シャリズムと売名行為、
経済効果が価値とばかり、精神的にからっぽに陥っている。

静聴せよ。
静聴せよ。
静聴せよと言っているんだ。

日本の根本がゆがんでいるんだ。誰もそれを笑っているだけだ。
それでだ。昭和45年11月25日、なにが起こったかだ。
1970年だ、万博ではないぞ。

東京新宿、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室、そうだよ、
ここは戦後の戦犯に判決が下された、
あの東京裁判の場でもあったのだが、
そこにひとりの男が自らの死と引き換えに乱入し、
ヤジと罵声のなかで演説した。

おまえら聞けえ。聞けえ、
静かにせえ、話を聞け、
男一匹が、命をかけて諸君らに訴えかけているんだぞ。
いいか、いいか。

それがだ、いま日本がだ、
ここでもって立ち上がらなければ、諸君てものはだね、
永久に外国の文化の奴隷である。外国の軍隊の犬である。
だから、だからだよ。諸君の、諸君の決起を待っているんだよ。

諸君は表現者だろう。
それならば、自分を否定する表現に、どうしてそんなに憧れるんだ。
自分を否定する流行りすたりに、どうしてそんなにペコペコするんだ。
そうしている限り、諸君てものは永久に救われんぞ。

多くの間違った文化現象がこの世に跋扈している。
芸術がめざすものとはなんなんだ、日本的なるものとはなんなんだ。
みんな、みんな間違っている。
あいつもこいつもみんな間違っているんだ。
この間違いに気がついたものはいないのか。

わかった、わかったよ。
諸君は芸術のために立ち上がらないと見極めがついたよ。
これで俺の芸術に対する夢はなくなったんだ。
それでは俺はここで万歳三唱を叫ぶ。

万歳! 万歳! 万歳!
万歳! 万歳! 永遠の芸術万歳
万歳! 万歳! 万歳!


これはほんのさわりの一部。
あいちトリエンナーレも
瀬戸内国際芸術祭もいいが
先ずは本展を見てから未来を語れ!







○会期:2010年9月5日(日)まで
○アーティストトーク:森村泰昌
 7月31日(土)14:00-16:00
○記念対談:上野千鶴子×森村泰昌
 9月4日(土)14:00-16:00
○問い合わせは豊田市美術館(0565)34-6610




  


Posted by かとうさとる at 00:27 | Comments(0) | アートの現在