2010年07月27日

大浜と碧南市藤井達吉現代美術館と庄司達さん


思えば私も遠くにきたもんだ

視聴者から寄せられた思い出の場所を訪ねるNHKの「にっぽん巡礼」に、心を癒される人は多いのではないか。私にとって、そんな場所の一つが大浜(現在の碧南市)の玉津浦海水浴場で、あれから半世紀余が過ぎたが、今も暑い夏がくるたびに、汐の匂いと悪ガキたちの歓声が聞こえてくるような気がしてならない。思えば私も遠くにきたもんだ。





大浜は矢作川の河口と衣浦湾が交じりあう半島に位置することから、古くから港町として栄え、江戸時代には「三河五湊」の一つに数えられた。製塩業も盛んで、中馬の背で運ばれた「足助塩」は大浜で製塩されたもの。
写真は明治末期の大浜の中心市街地。(西三河今昔写真集より転載)





現在は埋め立てられて臨海工業地帯になってしまったが、海水浴場は衣浦湾口から新明石海水浴場、新須磨海水浴場、玉津浦海水浴場と続いていた。写真は昭和30年の新須磨海水浴場(西三河今昔写真集より転載)


碧南市藤井達吉現代美術館は
大浜の町並みとともに
一度は訪れてみたい美術館


市内には蓮如上人ゆかりの応仁寺など多くの寺院があり、大浜の往時の繁栄を偲ぶことができる。その寺町の一角に一昨年(2008年)オープンしたのが碧南市藤井達吉現代美術館である。

日本の近代美術史に大きな足跡を記した碧南市出身の孤高の芸術家藤井達吉(1881-1964)を軸に、同時代の美術の枠組みの再構築を目指すというもので、大浜の町並みとともに一度は訪れてみたい美術館としてお薦め。

館長の木本文平さんは愛知県美術館副館長から招かれた藤井達吉の研究者で、お話を伺うと藤井達吉の再評価に向けた取り組みが全国展開で予定されているとのこと。藤井達吉の研究(私の場合は顕彰活動かも)については、私も小原和紙の調査を通して関わってきたが、深入りし過ぎて字余りになることは明白のため、今回は予告編としてご容赦願いたい。


今日の目的はこちら
藤井達吉現代美術館で庄司達展


碧南市藤井達吉現代美術館を語るとき、大浜という場所のこと、藤井達吉という偉人のことについて触れないわけにはいかないため、字数を割いたが、今日の目的はこちら。





中部地方は現代美術の活動が最も活発な地域の一つとして知られ、荒川修作、河原温など(少し古いかな?)数多くの作家を輩出している。

こうした愛知の精神的風土を受け継いで活躍しているのが庄司達(1939年生)さんで、布や紐など柔らかな素材を用いたシャープで美しい空間造形は他に比類がなく必見。

失礼を省みずに言えば、年齢的にも庄司さんの仕事をまとまった形で概観できる機会は限られているため、このチャンスを見逃す手はない。


庄司さんの仕事

余談に逸れるが庄司さんのお父さんは、嵯峨流の重鎮として活躍した庄司大虚さんで、庄司さんの空間に上質ないけばなの精神性を感じるのは、いけばな人の性でご容赦を。





参考作品1990年 NationalGalleryBangkok(タイ) 





参考作品1992年 NHK名古屋放送センター





参考作品1995年 新潟市美術館





参考作品1997年 国立現代美術館(韓国)


藤井達吉現代美術館のアクセスはこちら





  


Posted by かとうさとる at 17:33 | Comments(1) | アートの現在