2008年11月26日

時代を走り抜けたスーパー一座が終幕

時代を走り抜けたスーパー一座が終幕

岩田信市妖怪伝説

妖怪と言えば伊予の刑部狸が有名だが、人間の中にも稀に異能を超えて「妖怪」になった怪物がいる。私はこうした絶滅種の「妖怪」を密かに人類の文化遺産とよんでいる。名古屋にも何人か妖怪が棲んでいる。そんな妖怪の中でも東の一人横綱と衆目の一致するのが、私が畏敬するロック歌舞伎スーパー一座の岩田信市である。

妖怪のエピソードと言えば、私は犬山の岩田洗心館で行われた美術評論家の三頭谷鷹史さんの「前衛いけばなの時代」の出版祝賀会で、もう一人の妖怪、「超日常観察記」で日本雑学大賞を受賞した岡本信也さんと岩田さんの妖怪対決を目の当たりにしたことがある。狸の妖怪と酩酊した狐の妖怪の口論で話が噛み合うわけがないが、会話の断片から「ゼロ次元」に関わる名古屋の美術史を論じていることはわかった。ところが10分ほどしたころだったと思うが、突然「お前酔っ払っているな! 今まで俺の言ったことを全部忘れろ!」と、岩田さんが怒り出した。すでにかなり酔いがまわっているらしい岡本さんは柳に風。今頃気がつく岩田さんも岩田さんだが、二人の子供のようなやりとりが面白くて思わず笑ってしまった。

その岩田さんが主宰するスーパー一座が来月幕を上げる「大須師走歌舞伎」で30年の活動に幕を下ろすそうだ。この夏、17年続けてきた大須オペラが幕を閉じたように、予感はしていたが「ついにきたか」というのが正直な感想だ。まさに現代の河原乞食を見事に演じきって惜しまれて荷をたたむ。最高の美学だが、残念。

スーパー一座
スーパー一座は、1979年、前衛美術運動「ゼロ次元」のメンバー岩田信市と県美術館の「ゴミ裁判」の中心的人物の原智彦らが大須演芸場で旗揚げ。日本の伝統芸能の歌舞伎と外国の現代音楽のロックを合体させたユニークなロック歌舞伎で海外にも進出。パワフルで破天荒な舞台は理屈抜きで痛快。説明不可のため、先ずは見てのお楽しみ。

吉例大須師走歌舞伎
興業:平成20年12月2日(火)~12月25日(木)
小屋:大須演芸場
演目:「十六夜清心月現薊双葉」と「御贔屓勧進帳」の豪華二本立て
料金:全席指定前売り3,800円|当日4,000円
発売:チケットぴあ(☎0570-02-9999)、コンビニで販売
問合せ:スーパー一座☎052-262-5955



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Posted by かとうさとる at 03:09 | Comments(1) | アートの現在
この記事へのコメント
そうですか、ついに終幕ですか。

ロック歌舞伎には私も少なからぬ思い出があります。
およそ30年前、東京池袋の西武デパート内にあったアートフォーラムで公演を行った際に、ちょっとした成り行きで、黒子としてお手伝いさせていただいたんですよ。
岩田信市さんや岸本清子さん、みんな元気一杯でした。

時の流れ、と言ってしまえばそれまでですが、少なからぬ感慨が・・・。
Posted by risi@いけばな at 2009年01月01日 11:13
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    コメント(1)