2015年10月16日
加納俊治先生の訃報に寄せて
ローマ法王に献上された
世界の絵本作家が憧れる美しい紙を漉いた
加納俊治先生

10月16日発行の矢作新報より転載
「ぶんかの定点観測」は地元のオピニオン紙
「矢作新報」に月イチで連載しているコラム
小原和紙の由来

藤井達吉翁写真集は加納先生が監修
郷土史家の若子旭さんが発行した写真集
小原和紙は
古くから小原地区に伝えられた「森下紙」をベースに
昭和の本阿弥光悦と称えられた碧南市出身の
藤井達吉が考案指導した美術工芸和紙で
独自に発展したもの
近年、碧南市藤井達吉現代美術館の木本文平館長らの研究によって
藤井達吉の日本美術の近代化に果たした役割が明らかになったが
戦後(1945-50)
小原村に疎開した藤井達吉の懐に飛び込んで薫陶を受けたのが
後に日本を代表する美術工芸作家として活躍する
山内一生氏、故小川喜数氏ら村の青年たちで
彼らの成功体験は美術の奇跡の一つに挙げてもいいのではないか

藤井達吉翁写真集より
右から在りし日の藤井達吉翁、加納俊治、小川喜数の各氏
美の求道者
中でも孤高の人、藤井達吉の心の内に分け入り
美の求道者の道を歩んだのが加納俊治先生だった
数々の栄誉は省くが
私は幸運にも幻の和紙「紙布」
ローマ法王に献上する和紙を
先生の応接間で拝見したことがある
世界の絵本作家が憧れる最も美しい紙と聞いていたが
絹布のような深みと静か光沢は
宝石のように輝いていたのを
今でも鮮やかに覚えている
余談に逸れるが、私は職にあった当時
こうした小原和紙を記録することの重要性を痛感
代表作家による「小原和紙三人展」
映像による小原和紙の証言記録の制作に関わったことがある
証言記録は未完で継続しているとのことだが
私たちがしなければいけない重要な仕事の一つで
今はただただ頭を深くして深謝したい(合掌)
Posted by かとうさとる at 22:48 | Comments(0) | アートの現在