2009年06月27日

美術批評「リア21号」で国際展の現在を特集


同じ負け戦ならこんな素晴らしい負け戦はない

3年に一度の大地の祭典、越後妻有アートトリエンナーレ2009がまもなく開幕する。私が密かに楽しみにしているのは前回の閉会式で見た光景の続きだ。黒澤明の「七人の侍」のラストシーンで、野武士との戦に勝利した志村喬が平和のもどった百姓たちの姿を見て、「今度も負け戦だったなぁ」と苦笑いしながら坊主頭をなでるシーンがあるが、同じ光景を国際展で見るとは思わなかった。勝ったのは地元のおじちゃんやおばちゃんと全国からかけつけたボランティアの「おおへび」と「こへび」で、アーティストは傭兵にしかずだった。私は自分をアーティストなどと思ったことはないが、同じ負け戦ならこんな素晴らしい負け戦はないと思った。


美術批評「リア21号」で国際展の現在を特集

名古屋発の美術批評「リア21号」でこの国際展の特集をしている。1年後に迫ってきた地元の「あいちトリエンナーレ」を軸に、「見本市」から「街づくり」のコンテンツとして林立する国際展の現在を、座談、提言、テキストの三部構成で特集。「リア」の特徴は、書き手が多士済々の上、ジャーナリストの視点で編集しているため、アートファンも一般市民もそれぞれのポジションから問題意識をもつことができることで、中でも、井上昇治氏(新聞記者)の「だれのためのトリエンナーレか」は、市民感覚の疑問をわかりやすく解説したタイムリーなテキストで必見。笑ってしまったあと目から鱗になったのが、山本さつき氏(美術批評)の、日本のビエンナーレ、トリエンナーレの現状が、名古屋の「どまりつ」と構造が類似しているという指摘で、一瞬背筋が凍ってしまった。あとは最寄りの取扱い書店やギャラリーでお求めを。





「リア」の問合せは☎080-5139-1666(リア制作室)


  


Posted by かとうさとる at 00:46 | Comments(0) | アートの現在