2010年03月16日
花と器と場の至福の出会≠野畑光風展
三月に入って、三つのいけばな展に足を運んだ。松坂屋豊田店で開催された「峯月いけばな展」、市民文化会館で開催された「景風流いけばな展」、大府市の大倉公園内の旧大倉別荘で開催された「野畑光風展」の三つで、一つはデパートの催事場、一つはホワイトキューブのギャラリー、一つは数寄屋建築と、それぞれ異なった場で展開。いけばなと場の問題を考える上で、興味深い展観を見せていた。今回はその中から、3月14日(日)に足を運んだ野畑光風展を取り上げたい。
伝統と近代の美意識が生み出した
旧大倉和親氏別邸(大倉公園)
大倉公園は、大正8年にノリタケの初代社長の大倉和親氏が建てた別邸を、大府市が買い取り、公園として整備したもので、ツツジの名勝として聞いていたが、訪れたのは初めて。
交通情報で「知多道が事故のため渋滞」というニュースを聞いたため、一般道を半田経由で大府に向かったが、一般道も三河湾に架かる衣浦大橋で渋滞。どうにか会場の大倉公園に辿りついたが閉館時間まで30分と少し。小高い山の地形を生かした公園の坂道を急いでのぼっていくと、木立の中に見事な茅葺門が見えた。閑静なたたずまいに、一瞬、時間のことも、ここが市街地であることも忘れてしまいそう。
茅葺門から邸内に足を踏み入れると
手入れの行き届いた日本庭園が広がっていた。
冠木門の奥が大倉氏の旧邸で、路地のツツジに見事な花が咲いていた。ツツジにリボンを結んだもので、お洒落な心遣いに期待が増幅。一瞬「写真を」と思ったが、帰りに撮ればいいとパス。この判断が後で後悔することになったが、今できることを先送りする私の悪い癖で、反省。
爽やかな風とスローな時間に包まれて
いただいたお茶は最高の贅沢
ご案内をいただいた野畑光風さんは、私の30年来のいけばな仲間の一人で、女流いけばな作家として高く評価されているが地元での個展は初めてとのこと。いわば満を持しての個展で、爽やかな風とスローな時間に包まれていただいたお茶は最高の贅沢。ごちそうさまでした。
奔放な雪柳と灰を被った窯変の壺の出会いが至福の作品で、この「花」を見れただけで納得。「花器は誰?」と私。「黒ちゃんの壺」と野畑さん。黒ちゃんの愛称でいけばな仲間と交友のあった黒澤有一さんは、常滑が一番元気だったころ常滑で活躍していた作家で、現在は実家のある秩父で窯を構えているとのこと。懐かしい名前に、過ぎた時の流れを実感。
数寄屋に風を呼び込んだ花木のインスタレーション
黄色が鮮やかな連翹のインスタレーション
先のインスタレーションとは異質の花明りで歌の一首も。
野畑さんに感謝
閉館時間がきたため野畑さんにお礼の挨拶をして辞したが、写真を予定していた路地のツツジの花が見当たらない。管理が厳しいとは聞いていたが、杓子定規のお役所仕事に唖然。余談に逸れたが、花と器と場の至福の出会いにご案内をいただいた野畑さんに感謝。
Posted by かとうさとる at 17:03 | Comments(0) | いけばなから