2010年03月29日

好きなことを仕事にできる幸せ


いけばなはフラワーデザインではない

私がいけばなを習いはじめた頃は、どの花屋にも「切り出し」の名人がついていた。いけばなで使う枝ものを切り出す人のことで、名人の一人に同じ流派の先輩がいた。「かとう君一緒に行くか」と言ってよく手伝わされたが、好きなことを仕事にできる幸せをこのとき学んだ。

あれから半世紀近い時間が流れた。切り出し屋は絶滅し、「切り出し」という言葉を知る人も少なくなってしまった。

狂言の有名な演目の一つに、主人と太郎冠者が立花の「真」になる花木を探しにでかける『真奪(しんばい)』という演目があるが、いけばなのために花木を切ることは、自然と慣れ親しんだ日本文化の一つと言ってもいいのではないか。

近年は自然保護の思想など難しい問題に直面しているが、いけばなにとって「切る」ことはいけばなの根源である「切る覚悟」を促すもので、簡単に譲るわけにはいかない。いけばなはフラワーデザインではないからである。


切り出した山躑躅を玄関にいける





   切り出したもの:山躑躅、枯れ枝、松の小枝
   いただいたもの:グラジオラス
   花器:山田和俊(猿投窯)
   書:加納俊治(小原和紙)  


Posted by かとうさとる at 00:05 | Comments(0) | いけばなから