2009年08月04日

雑感-朝日新聞の大西若人氏の記事から


長かった梅雨が明けた

昨日、私の地元の東海地方も梅雨明け宣言されたが、全国各地で梅雨明け宣言が続いている。ニュースによると今日は九州北西部と北陸地方が梅雨明け宣言したそうだ。ちなみに気象庁の区分では新潟は北陸地方に入るとのこと。一般に北陸といえば、富山、石川、福井の三県をさすため意外な感じがしたが、大和朝廷の時代、既にこの地方は、越前(福井、石川)、越中(富山)、越後(新潟)と呼ばれていたように、地理的にも、気象学的にも影響しあっているため納得。

雑感-朝日新聞の大西若人氏の記事から

芝峠温泉から見た越後妻有。中央の山は日本百名山の一つ苗場山(2,145m)、左は同じく日本百名山の一つで、剱岳・穂高岳とともに、ロッククライマーが憧れる谷川岳(1,977m)。


雑感-朝日新聞の大西若人氏の記事から

余談に逸れたが、昨日の朝日新聞の文化欄に大西若人氏の記名で大地の芸術祭の展評が載っていた。既に読まれていると思うため、説明は省くが、一読して大地の芸術祭の経緯と現在と課題が記されており、美術ジャーナリストの真骨頂を見た気がした。

記事のポイントは
①「妻有ブランドの確立」(評価)
②魅力の維持が鍵(課題)
の二つで

私の目が止まったのは後者の「魅力の維持が鍵」で、大西は大地の芸術祭に対する内外の注目度に触れたあと、返す言葉で『しかし「安定」は、表現の源の一つともいえる、飢餓感や批評性とは距離がある。自然や人々と接して心を動かされるのは当然としても、「妻有型」といった作品のスイル化が現われているとしたら、寂しい』と指摘。さらに続けて、美術の魅力を失わないまま着地させる手がかり(ヒント}として、塩田千春と向井山朋子の試みをとりあげた。

私は長くアートマネージメントの職に就いていたせいか、「こと」を危機管理という視点で見ることが習性になっているため、大西の指摘に共鳴することが多い。「こと」を持続発展させることがいかに困難を伴うか、身をもって体験しているからである。大地の芸術祭も例外ではない。大西の指摘も妻有ブランドが確立したいま、足元を固めて明日に備えよ、という危機管理の重要性を示唆したもので、大西の大地の芸術祭に対する限りない愛着が伺えて嬉しい。

ところで「妻有型」とはどのような仕事をさしているのだろうか。記事では具体的な指摘がないため推測するしかないが、作家が「妻有」という心地のいい磁場に全身で寄りかかること、磁場に埋没して芸術的感動が希薄になることをを戒めているのではないか。大西が記事の小見出しに記した「地域の記憶を紡ぐ作品」と似て非なるものを指している、と勝手に推測しているが、本当のところはわからない。いずれにしても、私にも「妻有型」の心当たりがあるため他人ごとではない。大地の芸術祭の「公安」(禅でいうところの)として心にとめておきたい。

雑感-朝日新聞の大西若人氏の記事から

8月3日付朝日新聞のコピー


最後におまけ

蓬平/いけばなの家に出品しているFの会同人の大塚さんんによると、コンビニのパスポートの売上が前回の倍とのことで、夏本番に向けて大地の芸術祭はますますヒートアップしそうだ。

私が次に現地入りするのは月末の週になるため、大地の芸術祭の新着情報は大塚さんのブログがお薦め。私のような湾曲した見方ではなくストレートで笑ってしまうほど明快。方法は「古流かたばみ会」のホームページの「新着情報」を検索してください。









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Posted by かとうさとる at 19:15 | Comments(5) | 大地の芸術祭「蓬平いけばなの家」
この記事へのコメント
ご紹介いただき有難うございます。
うっかり軽はずみなコメントもできなくなってしまったなあ・・。

ところで、私もあの記事を読んで『「妻有型」と言った作品のスタイル化が現れているとしたら、寂しい。』という部分が気になりました。貴兄も感じているように、私も私なりの「妻有型」をおぼろげに感じていたものですから、記させていただきます。

私が常々思っている妻有の特徴の一つに、作品を作り上げるまでの汗や時間といった労苦・・観念ではない、肉体の復権みたいなものがあります。これが日芸の「脱皮する家」のように、特異な一点物の場合は特に問題はないのですが、インスタレーションの場合に、どこか似通ってきてしまう傾向が現れているように思うのです。
たとえば前回評判になった菊池歩の、ブナ林にビーズの花を展開した作品と今回のアントニー・ゴームリー(これは未見ですが)。
作品から受ける印象は全く違うかもしれないけれど、手法が似てしまうような・・・自然の中でのインスタレーション・地元の人達との協働。今回小白倉の野外で作られている作品も、これも未見ですが、話を聞いたところではどうもこの種の作品のようです。
それから、石塚沙矢香さんや塩田千春さんの作品に見られる、家や土地の記憶を繋ぎとめる物を作品の中に取り込む、といった要素。宇田川さんの作品や、広く見れば小巻さんの「繭の家」もこの系譜に入ると思う。
いずれも完成度の高い作品なので、スタイル化と言い切ってしまうには語弊がありますが、大西さんの心配もまんざら杞憂とはいえない。
亜流が次々に出てきて「またこれか」と思われる前に、一度仕切りなおしの時期なのかなあ、とも思ってしまうのです。
北川さんがどう出るのか、益々妻有から目が離せません。
Posted by risi@いけばな at 2009年08月05日 15:26
訂正!

すいません。
アントニー・ゴームリーではなくアンティエ・グメルスの間違いでした。
Posted by risi@いけばな at 2009年08月05日 16:08
今日は、大変楽しく読ませていただきました。アンティエ(アントニーではなく)です。ゴーメリさんや前回のビーズの作家の方に例えられて非常に光栄です、どうも有難うございます!でも、作品を見た上のご評論のほうは、いいと思います。是非、見にいらしゃって下さい。
おっしゃる事をよく理解できます。なんとなく、「越後妻有ブランド」ができそうですね。
素晴らしいことだと思います。
例えば、手法が全部同じでも、かまわないと思います。
油絵だって、ほとんど全部同じ手法です。
大事なのは、本物かどうか、それに、深いかどうか、それに技術が内容にふざわしいかどうかだと思います。描かれてる形さえも、全部同じであっても、いいと思います。
「またこれか?」と思われると、残念だけど。そう思わせるならば、作品の魅力や魔術や純粋な内容が物足りなかったのでしょうね。
どうぞ、もしも又いらしゃったら、アーテイストのみなさんの手法や作品の表面の印象は似てるかどうかというところよりも、是非内容をお味わいいただければと願っております。
私の作品の印象や手法が「越後妻有ブランド」ならば、本当に嬉しく、誇りに思います。毎日、すくなくとも200人のお客様が大雨の中で400メートルの坂道を疑いながら上がって、幸せなお顔で又降りてきます。「素晴らしかったです、ありがとう!上って、本当によかったです。」と、言って下さる。それで、作家として、とても嬉しいです。
おしも又いらしゃって、ちょうど私もいれば、是非お声をおかけ下さい。
アンティエ
Posted by アンティエ・グメルス at 2009年08月13日 21:52
アンティエ・グメルス様

先ずはじめに、作品を見ずにグメルスさんのお名前を掲げてしまった非礼をお詫び申し上げます。
グメルスさんのご意見にまったく異存はございません。
「妻有型」云々につきましても、今回出品されている個々の作品についてではなく、あくまでも今後の展開に対しての危惧を申し述べたつもりです。お気を悪くされたようでしたら、重ねてお詫び申し上げます。
「内なる旅」、13日に拝見してまいりました。
思っていたよりもはるかにカラリとした感じで、心が浄化されていくような神聖な空気を感じました。小枝や小石、鏡などによって導かれていくアプローチもたいへん心地よいものでした。
これから見に行く人に勧めている作品の一つになっております。
会期中に再訪するつもりでおります。ぜひお会いして、いろいろとお話したいと思っております。

大塚理司
Posted by risi@いけばな at 2009年08月17日 13:41
大塚理司さま
ご返事、どうも有難うございました。
「お気を悪くされたようでしたら、重ねてお詫び申し上げます。」-。。。、とんでもございません!私は絵描きで、立体作品が初めてです。みんなで作る作品も始めてです。そうして先輩たちとの交流、とても有難く思っております。
ご意見を読んでから、いろいろ考えました。
今日も団体のお客様がいらしゃって、いろいろ質問されました。毎日同じ質問を100回きかれるのは、有難いですが、答えがパターンになってしまいます:
「目玉は、1180まい。
釣り糸、10km。
手作りの「光」の葉は、5万枚。」と、答えてしまいます。
でも、それは、アート、内容と、関係のない話ですね。素晴らしいアーテイストならば、葉っぱ一枚を、ちょうどいい場所において、それで完璧な作品でしょう。
それがまだできないので、材料をたくさんつかってしまいますね。
勿論、マスコミで、その「なんkm」や「何キロ」や「何万枚」という数をとうして、作家たちの苦労や真面目さを表せるでしょう。
見るお客様が、そういうことと関係なく、直接に感じて下さるので、心配ないです、ね。
生け花の家は、とても、評判がいいです。
9月に私の両親がドイツからきますので、一週間、いっしょにみんなさんの作品を見るつもりです。


お会いしたいですね。
アンティエ
Posted by アンティエ・グメルス at 2009年08月19日 01:02
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