2016年10月20日

写真家の石田真典さんを悼む

 









 去る9月17日(土)、写真家の石田真典さんが、入院先のトヨタ記念病院で逝去した。享年73歳。葬儀は石田さんが願っていた家族葬で営まれ、黄泉の国に旅立った。




  10月21日発行の矢作新報より転載


 石田さんは1944年豊田市に生れる。東京写真専門学校を卒業後、ヤマウチ写真場を経て、1974年フリーカメラマンとして独立。

 時代が人を作るのか、人が時代を作るのか知らないが、写真は長い記念写真の時代から表現としての写真の時代を迎えていた。満を持しての独立である。

 そんな石田さんがライフワークとしたのが、厳寒の釧路湿原やオホーツクの海を撮り続けた「北の詩景シリーズ」だった。





  風上に顔を向けて吹雪の止むのを待つタンチョウ
  (石田真典写真集「氷点下の世界」より)



過酷な自然と一体になって一瞬のシャッターチャンスを待つ。孤高な背中が写し撮ったシリーズはネイチャーフォトの到達点の一つとして高く評価され、2005年写真家として初の豊田芸術選奨を受賞した。

 普通はこれで落ち着くところだが、石田さんの活動はその芸術性にとどまらず、とよたのアーカイヴに光を当てた「とよた今昔写真展」「生活から見たとよたの文化50年」などなど、とよたの文化を主導。





 フォスコ・マライーニ写真展の図録 


 また山岳研究家の杉本誠さんが企画した「フォスコ・マライーニ写真展」「ウェストンの見た明治・大正の日本」「日本山岳写真80年」「今、地球を歩く水越武写真展」など、日本の写真史にエポックをしるした展覧会にテクニカルスタッフとして参画。成功裏に導くなど、多岐にわたる活躍は枚挙にいとまがない。

 現在とよたの写真は、石田さんの薫陶を受けた後進が写真家として巣立ち、石田さんが拓いた道をライフワークとするなど、大きな花を咲かせているが蓋棺事定。石田さんを失った喪失感は日ごとに深まるばかりだ。  


Posted by かとうさとる at 20:50 | Comments(0) | とよたの文化