2015年05月26日

六栁庵やそさん逝く











妖怪列伝に
六栁庵やそと名を印す




昨夜
モダンダンスの野々村明子さんから
「さとるさ-ん、やそさんが
亡くなってしまわれたわ」と
訃報のメールが入った






伊予の国に刑部狸という狸の妖怪伝説があるが
私は予てから特上の人間を刑部狸に例えて畏敬してきた

そんな妖怪列伝に名を印す
長唄・三味線の六栁庵やそさんが
癌を公表したのが6年ほど前

左肺を半分失っても
キャリアの集大成となる区切りの演奏会をしても
癌が脳に転移し
覚悟の生前葬を行っても
誰もがやそさんのシャレと笑った





事実、昨年暮れの生前葬は
今生の暇乞いとは名ばかりで
抱絶絶倒の面白さ

粋でダンディでちょいワルの
やそワールド全開

三途の川の渡し場で
お釈迦さんと閻魔さんとイエスさんと
美魔女の観音さんとマリアさんが呉越同舟して
♪えいじゃないかゞ♪と
踊りだしたような極楽絵巻

「こんな生前葬なら次の一周忌が楽しみ」と
みんな大爆笑
やそさんも一緒に笑った





  昨年9月、豊田市藤岡飯野町秋葉神社農村舞台で上演した
  農村舞台アートプロジェクト「義人・飯野八兵衛」に
  ゲスト出演した六栁庵やそさん



みんなの願いが通じたのか
脳に転移した癌の摘出手術に成功
やそさんは何事もなかったように三途の川から
娑婆に戻ってきた

今年の桜は一段と艶やかだった
「9月に守山のお寺で
台本、かとうさとるで
飯野八兵衛を語りだけで挑戦したい」
と嬉しいメールが入った

私は「花をいけさせてほしい」と
即答した

それからしばらくして
「癌が6度目の転移して薬が効かない…」
とメールが入ったが
刑部狸のやそさんが倒れるはずはないと
今度も奇跡を信じた
台本も書き直した





やそさんは江戸末期から続く邦楽師の家に育ち
師匠の杵屋五三郎に従って東宝歌舞伎の「長谷川一夫公演」や
「大川橋蔵公演」の三味線弾きを担当

40歳から名古屋に活動の場を移し
ジャズやクラシックやオペラやフラメンコ
人形劇などジャンルを横断したコラボレーションで
独自のやそワールドを確立

海外公演も多く
芸どころ名古屋を代表するアーティストとして活躍
私と同じ申で享年71歳というから
この世界では早逝
突然の訃報は語る言葉もない(合掌)
  


Posted by かとうさとる at 18:19 | Comments(0) | 農村舞台

2015年05月26日

ぶんかの定点観測から












後の祭り


ぶんかの定点観測は地元紙の矢作新報に
月イチで連載しているコラム

川の水が地形に沿って流れるように
文化もまた同じ

もし違いがあるとしたら
文化に意志が働くこと

起きているコトをリアルタイムに観測することで
地域の文化の地形が透けてみえるのではないか

そんな己惚れた思いからスタートしたが
観察されているのは私で
悔いたが後の祭り






  5月22日発行のコラムより転載



  


Posted by かとうさとる at 01:32 | Comments(0) | らくがき帖 | 花日記