2009年11月08日

写真が描く戦後1945-1964 日本の自画像


もう一つの真善美
非情の目がとらえた戦後日本の原風景



愛知県美術館で写真が描く戦後1945-1964「日本の自画像」を見た。終戦の焦土の中から奇跡的発展をとげ、経済大国として歩み始めた東京オリンピックまで。19年間の日本の自画像(原風景)を、戦後日本の写真界を代表する11人、168点の写真で描いたもので、県美術館に急いだ。

使用されている写真の多くは、既刊の写真集や各社が競った戦後50年の記念誌で見ていたが、こうした形でまとまって展観するのは初めて。自由という一縷の希望に託して必至に生き抜いた戦後日本の光景は、姿勢を正さずして見ることができない。


写真リアリズムというと土門拳を思い浮かべるが、人間の想像力を超えた現実を目の当たりにしたとき、カメラをもった人間は戦場カメラマンであり、リアリズムという選択肢以外にない。身体と一体化した重厚なアナログカメラという幸運もあったと思う。命を削り取るようにして切り撮った一枚一枚の写真を前にすると、どんなリアルなニュース映像も色あせて見える。生みの苦しみのなかにいる今の日本とって、忘れてはいけない原点で必見。





本展の構成は、作家におもねることなくテーマ別に厳選。写真のフレームの材質もマットの紙質も統一され、爽やかで見やすい。企画はパリ在住の日本写真史研究者のマーク・フューステルで、写真の選定・構成・展示のすべてを一人で担当したとのことで納得。


11人の写真家は次のとおり

石田泰博(1921-)
川田喜久治(1933-)
木村伊兵衛(1901-1974)
田沼武能(1929-)
東松照明(1930-)
土門拳(1909-1990)
長野重一(1925-)
奈良原一高(1931-)
濱谷浩(1915-1999)
林忠彦(1918-1990)
細江英公(1933-)

写真が描く戦後1945-1964「日本の自画像」は
愛知県美術館で12月13日(日)まで





  


Posted by かとうさとる at 00:13 | Comments(0) | アートの現在