2009年03月08日

お薦め選書2 図説いけばな体系







図説いけばな体系(全6巻)

本書は、図説茶道体系(全7巻)に続いて
角川書店が発行したもので

監修:川端康成、谷川徹三、細川護貞 
編集参与:重森三玲、西堀一三、湯川制 
編集委員:玉上琢彌、林屋辰三郎、山根有三
という斯界の最高の学識者が参画した
いけばなの学術書の決定版。

内容は
第1巻 いけばなの美学(井島勉編)
昭和46年4月30日初版
第2巻 いけばなの文化史Ⅰ(玉上琢彌編)
昭和46年6月30日初版
第3巻 いけばなの文化史Ⅱ(林屋辰三郎編)
昭和45年11月20日初版
第4巻 現代のいけばな(河北倫明編)
昭和46年9月30日初版
第5巻 いけばな歳時記(山根有三編)
昭和47年8月10日初版
第6巻 いけばなの伝書(岡田幸三編)
昭和47年2月10日初版
の全6巻。

いけばなを体系的に勉強したい人、
また日本文化の精神的源流とその流れを学びたい方の
座右の書としてお薦め。


いけばなの高揚した時代が遺したもの

バルブの時代に世界的美術品が日本に吸い寄せられたように、
より強い磁場にビジネスモデルが集中するのは世の常というが、
バルブがはじけた後、アンドリュー・ワイエスや
アンぜルム・キーファーのまとまったコレクションが
日本を離れたニュースを聞いたときは情けなかった。

出版界を同列に扱うのはお門違いだが、
奥付を見ると遺されたいけばな選書の大半が
ある時期に集中していることがわかる。

昭和40年代はじめから50年代のはじめにかけて、
ほぼこの10年間に集中している。

ビートルズの来日で沸いた時代、
日本で初めて全国組織の
(財)日本いけばな芸術協会が設立(昭和41年)された。

関東、関西の大流派が中心になったため
地方の流派が対抗する形で日本華道連盟を設立(昭和43年)。
いけばな界は空前のブームに沸いた。

デパートはいけばな展の誘致合戦を繰り広げ、
出版界はいけばなの書籍を競った。

バルブの時代、日本は消費しただけで何も残さなかったが、
いけばなは書籍という文化遺産を遺した。

角川の「いけばな体系」の他にも
主婦の友社の「図説いけばな文化史」「花材別いけばな芸術全集」、
講談社や小学館からも同じような豪華本が相次いで発売された。
末期には現代いけばなの方向性を決定した
「いけばな批評」の創刊(昭和48年)というエポックもしるした。

ちなみに私は給料より高い「本」を買ったことがあるが、
さすがに立華図の豪華本だけは高すぎて手が出なかった。

余談に逸れたが、
昔ながらのお稽古からいけばなの道に入った私にとって、
いけばなに学術書が存在すること自体信じられない驚きだった。
多分アラカン世代以上の人は同じような体験をしたのではないか。


残念ながら
これらの選書はほとんどが絶版
先に紹介した選書1と
角川の「いけばな体系」を
古書店で見つけた方は是非お薦め
  


Posted by かとうさとる at 01:22 | Comments(0) | いけばなお薦め選書