2008年10月14日

作品ライブラリー(7)ムシロフェンス









素材:ムシロ、玉石、ロープ/スペース:≒1200㌢×800㌢/
場所:豊田市民文化会館(豊田)1983年


天井の窓が開いた

この作品は、作品ライブラリー6でとりあげた「ヨリシロ」と同じ個展で発表したもので、タイトルの「ムシロフェンス」は、憧れていたクリストのランニングフェンスから想を得たもの、というよりもクリストに対する畏敬の気持ちを表したもの。後にクリスト展の企画に関わり、名古屋駅にクリスト夫妻を迎えたが、私にとって新幹線から降りてきたクリストは、洛陽の都で杜子春が見た夢の世界で、未だに信じることができない。

信じることができない、と言えば、この作品の誕生そのものも偶然の賜物で、できあがった空間を見て一番驚いたのが私自身だった。後にインスタレーションという言葉を知ったが、壁面を背にした手法しかない私にとって600平方メートル近い無限の空間は象に挑む蟻のようなもの。無謀な企てと悔いたが後の祭りで、そんなときに閃いたのが身近にあったムシロだった。

出来上がったムシロフェンスを前にした大人はみんな不思議そうな顔をして首をかしげ、子供たちは遊園地で遊ぶようにムシロフェンスの下を潜り抜けて走りまわっていた。「作品を分けてほしい」という人まで現れた。「やった」と内心小躍りした。事情を聞くと「畑の霜よけにしたい」とのことで、最後にオチがついてしまったが、私にとってムシロフェンスは青天の霹靂で、天井の窓がこのとき開いた。



サイドから見たムシロフェンス

  


Posted by かとうさとる at 13:02 | Comments(0) | 作品ライブラリー